債務整理(任意整理・個人再生・自己破産)

借金問題の解決は、一般的に債務整理と呼ばれておりますが、解決の方法は、借金を返して解決するか、返さないで解決するか、いずれかによります。このうち、借金を返さないで解決するというのが、自己破産です。他方で、借金を返して解決するというのが、任意整理と個人再生手続です。

いずれの方法が良いかは、相談者の財産の保有状況、収入状況と債務の額やその内容、借金の返済に当てられる金額によって、おおよその方向性が決まります。たとえば、病気やリストラで収入がなくなったという場合には、借金を返すということが難しいので、自己破産が適当です。他方で、住宅ローンが残っているという場合には、自己破産すると、住居を手放さなければならないため、住宅を確保しようと思えば、任意整理あるいは個人再生手続を選択することになります。いずれの方法かは、主に借金の返済に当てられる額によって検討することになります。

弁護士に依頼して、債務整理をする場合には、自己破産・任意整理・個人再生手続のいずれの方法によっても、信用情報機関に登録されます(いわゆるブラックリスト)。
したがって、しばらくの間、新たなローンを組んだり、クレジットカードが利用できなくなります。

債務整理をすれば抜本的な解決が可能です。借金問題でお悩みの方は、早めのご相談をお勧めします。

<以下、任意整理について>

任意整理とは、弁護士が、依頼者の代理人として、債権者である消費者金融会社やクレジットカード会社と個別に交渉し、返済総額や返済方法について合意し、その合意に基づき債権者に対して一括または分割(最大60回程度)して返済する方法です。

弁護士は、任意整理の依頼を受けた後、ただちに債権者に対し、受任通知を送付し、これまでの取引履歴(いついくら借りて、いついくら返済したか)を取り寄せします。それに基づき、利息制限法に基づく引き直し計算をして、法律上の債務の額をはっきりさせます。その上で、債権者と交渉しますが、分割払いを希望する場合は、個人再生手続のような大幅な減額は望めません。親族などの援助等により元利金を一括で支払える場合には、債権者によっては、一定割合の減額が可能な場合もあります。

任意整理のメリットは、自己破産や個人再生手続と異なり、すべての債務を対象とする必要はないことです。つまり、住宅ローンや自動車ローンがある場合でも、それには触れることなく、特定のクレジットカード会社の債務やカードローンだけを整理することも可能です。したがって、住宅や自動車を確保したい場合や、返済月額の高いこの債権者について月々の金額を減額したいという場合にも、任意整理が適切です。

他方で、任意整理のデメリットは、信用情報に事故情報が登録されるため、新たな借り入れができなくなったり、クレジットカードが利用できなくなること

任意整理によって解決できるか否かは、任意整理の対象とする債務の総額がいくらか、それに対して、相談者が毎月返済に当てられる金額がいくらか、によって検討することになります。
たとえば、5社で300万円の債務(ただし、利息制限法による引き直し計算をした後の額)がある場合には、60回で支払うとすると毎月5万円を支払うことになります。送金手数料も考慮すると、5万5000円程度の余裕がなければ任意整理は難しいということになります。その場合は、個人再生手続を検討することになります。

<以下、自己破産について>

自己破産とは、自己の財産・収入に比して、過大な債務を負担した場合に、裁判所に申し立てることにより、債務の支払義務を免除してもらう手続きです。

自己破産のメリットは、言うまでもなく借金が帳消しになることです。ただし、借金の理由がギャンブルや遊興費による場合などは、免責不許可事由といい、法律上、原則としては帳消しにしてもらえない場合がありますが、浪費について反省している等の事情があれば帳消しにしてもらえることもあります。

他方で、自己破産のデメリットとしては、①官報という国の発行物に住所及び氏名が掲載されること、②資格制限といい、たとえば保険外交員や警備員という職種は、破産の手続期間中は仕事ができなくなること、③ブラックリストに登録され、借入ができなくなること、です。
自己破産のデメリットについて、法律相談に際してよく質問を受けますが、巷間で言われていることは誤解も多いようですので、弁護士に確認していただくことをお勧めします。

自己破産の申立ては、裁判所に自己の財産・収入および債務の状況を明らかにするとともに、債務の状況・破産に至る経緯について明らかにします。したがって、財産・収入の状況を明らかにする資料をご提出いただくことになりますし、同居者がいる場合は同居者の方の資料も必要です。

破産手続のスケジュールとしては、裁判所に申立てをしてから3~4か月で終了します。

以上の説明は、一般の方の破産手続きです。これに対し、個人事業をされていた方や相当額の財産を保有されている方の場合には、管財事件といって、少々、複雑な手続きになります。

本来の破産手続きというのは、破産者の財産をお金に換えて、債権者に配当をすることを予定しております。ただし、一般の方の場合には、お金に換える財産がないということが多いので、手続きが簡略化されているのです。

個人事業を営んでいた方や相当額の財産を保有している方などの場合には、裁判所が選任した破産管財人が 換価手続、配当手続を行います。そのため、弁護士費用のほかに裁判所予納金として20万円~の準備が必要になります。また、一般の方の手続きよりも時間がかかることが多いです。

<個人再生手続>

個人再生手続とは、 裁判所の許可を受けた上で、債務の一部を原則3年間(事情があれば最長5年)で支払い、残りの債務を免除してもらう手続です。
具体的なイメージとしては、100万円から500万円の債務についてはそのうち100万円を支払えば、残りの債務は免除してもらうことができます。500万円の債務でも5分の1に圧縮できます。
仮に、3年間で100万円を支払うとすると、3年間の月々の弁済額は3万5000円程度になります。逆に言えば、月々3万5000円ずつ支払っていくことができるなら、500万円までの債務については個人再生手続で解決が可能ということです。
ただし、清算価値保障原則といい、自分の持っている財産の相当額は弁済する必要があります。すなわち、300万円の債務がある一方で、財産120万円の財産があるときは、弁済額は100万円ではなく120万円となります。

個人再生手続のメリットは、住宅ローンを支払いながら、他の債務を圧縮できることです。すなわち、自己破産だと住宅は手放さなければなりませんが、個人再生手続によれば住宅を確保することが可能です。また、自己破産と違って、免責不許可事由といった制限はなく、ギャンブルや浪費による借金も個人再生手続の対象とすることができ、債務を圧縮できます。また、自己破産のような資格制限もありません。

他方で、個人再生手続のデメリットは、①官報に住所・氏名が掲載されること、②信用情報に登録され、借入ができなくなることです。

個人再生手続の申立ては、裁判所に自己の財産・収入および債務の状況を明らかにした上で、3年間で総額100万円を支払うことができることを説明する必要があります。したがって、財産や収入の状況を明らかにする資料をご提出いただくことになりますが、たとえば公務員の方や会社員の方で一定の勤続年数があり、安定した収入を得ていれば、履行可能性を認めてもらえると思われます。

個人再生手続のスケジュールとしては、裁判所に申立てをしてから4か月程度で裁判所の許可を受け、その後、債権者への弁済を開始し、3年ないし5年で終了します。

<相談にあたって>

ご相談にお越しになる際は、全債権者の名前、現在の債務額及びおおよその取引開始時期、現在の返済月額が分かる債権者一覧表をご準備いただくと相談がスムーズかと思われます。

 

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